戸部 健 教授(中国近代史)

近代に政治・経済・社会が急激に変化するなかで、中国の人々はそれにどう向き合ったのか?

近代という時代、帝国主義国からの圧迫に対抗するため、「老大国」たる中国は急いで近代化に取り組まなければなりませんでした。そのため中国の様々な仕組みが急速に変化しましたが、その流れに付いていけない人もたくさんおり、しばしば改革者たちから「自覚のない者」などと見られてきました。ただ、そうした「自覚のない者」の言い分を聞くことで逆に見えてくる当時の中国の実態というのもあるのではないでしょうか。そのような考えから、小学校に行かない人々を対象にした教育(社会教育)や、近代的な医療・衛生改革を前にした中国伝統医士の動きなどをこれまで研究してきました。こうした視点は、現代における様々な「改革」について考える上でも、かたや背景の異なる様々な人々が共に暮らしていく社会の構築方法を考える上でも有効ではないかと考えます。

なお、以上の文脈とは別に、地域貢献の観点から近代アジアにおける茶業の歴史についても研究しています。

清朝の離宮だった頤和園(北京近郊)

教育面では、広くアジアを学ぶ学部生・大学院生の指導を担当しています。これまでも中国以外に朝鮮、モンゴル、タイ、イラン、トルコの歴史を専攻する学生たちの卒業論文を指導してきました。また、日中関係史を学ぶ学生も受け入れています。そして文献講読では、学生たちが漢文と現代中国語を自力で読めるよう、手助けをしています。

かつて外国租界があった天津

【主な研究業績】

・戸部健『近代天津の「社会教育」―教育と宣伝のあいだ―』汲古書院、2015年。

・戸部健「1920年代上海における霍乱流行と中医」『史林』第103巻第1号、2020年。

・戸部健「1910~20年代のアメリカ合衆国における中国茶の宣伝―ハリソンズ&クロスフィールド社系企業との関わりを中心に―」『アジア研究』(静岡大学)別冊9号、2024年。

 

【卒業生による主な卒業論文のテーマ】

・「明代成化期における内閣の性格―閣臣間の関係を中心として―」

・「近代中国の善堂と宗教的医療行為―雲南省騰越済善局の医療行為―」

・「静岡県からの満洲移民と現地農村」

・「植民地朝鮮における公娼制度と慰安婦」

・「タイ・サンガの変容と国家の宗教的・政治的統合(1902-1962)」

・「オスマン帝国の近代化の過程におけるオスマン主義と教育改革」