今年度の日本史学史料講読では、室町時代の皇族である貞成親王(1372~1456)が記した『看聞日記』を読んでいます。この日記は政治・社会・文化の諸相に関わる多くの情報を含んでいて、この時代の人々のあり方を知る上で重要な史料とされています。
宮内庁書陵部編『図書寮叢刊』看聞日記第1巻~第7巻(同所・明治書院、2002~2014)が刊行されており、こちらをもとに日本史分野のゼミでは輪読しています。今年度は応永23年(1416)の記事を読み進めていますが、父である栄仁親王の死が大きなトピックとなりました。
文献史料を対象とする歴史学では、研究したい時代の文体に慣れ、その文意を正しく捉えることが分析の重要な鍵になります。また、単に語句や人名を調べるだけでなく、虚偽・誇張や、文字として書かれなかった情報をも批判的に意識して、史料が作成された意図や歴史的な背景に深く迫ります。こうした作業を根気強くおこなうことは、事実を正しく認識できる力をつける訓練になるでしょう。
なお、この季節になると、3年生がゼミ報告の準備に取り組むだけなく、4年生も卒業論文の執筆にいよいよ追われようになり、私たちの研究室はにぎわいを見せます。論理的な思考を導くための訓練を重ね、大学生のうちにしっかりと知的な能力を身につけることは、とても大切なことです。