静岡大学人文社会科学部考古学研究室では浜松市とともに、浜松市北区滝沢町に所在する滝沢鍾乳洞遺跡と行者穴遺跡の発掘調査を2020年度から継続的に実施しています。滝沢鍾乳洞遺跡と行者穴遺跡はお互いに近接する洞窟遺跡です。行者穴遺跡においては1998年度に浜松市博物館による発掘調査が実施され、縄文時代草創期に遡るとみられる資料が出土していました。2022年度にその調査区を再発掘したところ、後期旧石器時代後半期の初頭に遡る炉跡とみられる遺構が残されていることがわかりました。今年度(2023年度)は、9月12日から26日の15日間で行者穴遺跡の発掘調査を実施し、昨年度の調査区の土層断面を記録するとともに、調査区を拡張して発掘しました。そうしたところ、後期旧石器時代後半期初頭の文化層よりも新しい時期(あるいは時代)の文化層が残されていることが新たにわかりました。今後、出土遺物の年代測定を実施して、その文化層の年代を明らかにする予定です。なお、今年度の発掘調査は科研費基盤研究B「更新世末から完新世初頭における先史狩猟採集民の生態資源利用をめぐる研究 」(2023年4月~2028年3月 代表:山岡)の調査研究として実施されました。