2026年の8月から9月にかけて行者穴遺跡の発掘調査を行いました。

2026年8月20日から9月6日の日程で浜松市浜名区滝沢町に所在する洞窟遺跡である行者穴遺跡の発掘調査を実施しました。この発掘調査は、科研費基盤研究Bの研究課題として採択された「更新世末から完新世初頭における先史狩猟採集民の生態資源利用をめぐる研究 」(2023年4月~2028年3月 代表:山岡)の調査研究として実施したものです。行者穴遺跡の発掘調査は、静岡大学人文社会科学部社会学科の専門科目である考古学実習ⅡおよびⅢに関連するフィールドワークとしても実施しており、調査期間中に学部学生16名と修士課程の大学院生1名が調査に参加しました。
行者穴遺跡の発掘調査は、1998年度に浜松市博物館によって実施され、その後、時間をおいて、2022年度からは静岡大学人文社会科学部(考古学研究室)と浜松市での共同調査として進められています。2022年度からの発掘調査で、約2万8千~2万7千年前と約2万年前の2つの旧石器時代の文化層が残されていることが明らかになりました。石器と動物遺体が出土する文化層が洞窟遺跡で発見されたのは、本州では、青森県の尻労安部洞窟に次ぐ、2つ目の事例になると思われます。
今年度は、約2万8千~7千年前の文化層に近い地層を発掘し、2点の動物遺体(動物の歯と骨)が出土しました。今後、発掘して回収した土を5㎜と1㎜の篩を用いて水洗選別を行い、石器や動物遺体が含まれていないか調べていくことになります。今年度の発掘調査の成果については、2027年度末に概報を発表する予定です。

2026年度の行者穴遺跡の発掘調査の様子

『静岡県考古学研究』第56号(旧石器時代研究の特集号)・大学院生の論文の掲載 

少し前のことになりますが、静岡県考古学会の会誌である『静岡県考古学研究』の第56号が2026年2月に刊行されました。第56号は旧石器時代研究の特集号で歴史学・考古学コースの教員の山岡が執筆した「静岡県内における近年の旧石器時代研究の進展」と題する総説が掲載されている他、人文社会科学研究科 比較地域文化専攻 歴史・文化論コース 修士課程に所属している立木菖さんと山岡が執筆した「愛鷹山麓のBBV層期の環状ブロック群の検討」と題する論文が掲載されています。この論文は2022年度に立木さんが静岡大学人文社会科学部社会学科で提出した卒業論文(指導教員は山岡)をもとにして執筆されたものです。立木さんは、現在、静岡県埋蔵文化財センターで文化財専門職員として勤務しながら、社会人学生として修士課程で学んでいます。

2026年度日本旧石器学会若手奨励賞を大学院生が受賞

人文社会科学研究科 比較地域文化専攻 歴史・文化論コース(考古学専攻) 修士課程に所属している高山英里香さんが、第24回日本旧石器学会で「更新世末の愛鷹山麓・富士山西南麓における遺跡分布の変遷」というタイトルでポスター発表を行い、「2026年度日本旧石器学会若手奨励賞」を受賞しました。

高山さんは愛知県埋蔵文化財調査センターに学芸員として勤務しながら社会人学生として修士課程で学んでいます。

大学のHPの記事(以下のURL)では受賞したポスター発表の概要についても掲載しています。興味があればそちらもご覧ください。

https://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=12170

受賞した高山英里香さん(左)と日本旧石器学会の堤 隆 会長(右)

行者穴遺跡と滝沢鍾乳洞遺跡での調査成果に関する普及活動

考古学分野では、3年生と4年生が履修する考古学実習Ⅱ・Ⅲの授業時間を利用しながら、考古学の調査研究成果を社会に還元する取り組みを行っています。昨年度は、浜松市浜名区に所在する行者穴遺跡と滝沢鍾乳洞遺跡での調査研究成果の普及活動として、両遺跡の様々な価値について調べ、大学祭などで展示を行いました。
行者穴遺跡では、近年、本州2例目になるとみられる旧石器時代の文化層が発見されていますが、近接する滝沢鍾乳洞遺跡においても、浜松市博物館などによる発掘調査で、様々な時期の考古資料が残されていることが明らかにされています。静岡大学考古学研究室では、浜松市との共同調査として、2020年度以降、両洞窟遺跡の調査研究を進めてきましたが、その過程で、考古学の発掘調査で明らかにされたことの他にも、洞窟の利用をめぐる様々な歴史があることがわかっていました。そこで、2025年度には、近年に至るまでの両洞窟遺跡の利用の歴史を調べて整理するとともに、両洞窟遺跡にどのような価値があるのかを説明する展示を行うことにしました。
滝沢町の歴史や洞窟利用について調べるために、資料を収集するとともに、両遺跡の地権者の方や滝沢町の方々からお話しをお聞きする中で、両洞窟遺跡は現在に至るまで様々なかたちで利用されており、多様な価値があることがわかりました。静岡キャンパスの大学祭期間中に開催した第52回考古展「滝沢鍾乳洞遺跡と行者穴遺跡」では、発掘調査で出土した資料とともに、両洞窟遺跡の多様な価値について紹介する展示を行いました。同様の展示は、浜松キャンパスのテクノフェスタ期間中に高柳記念未来技術創造館で開催された特別展の中でも行わせていただきました。

第52回考古展の様子(1)

第52回考古展の様子(2)

11枚の展示ポスターのPDFファイルを下記のURLからダウンロードしていただけます。

http://hdl.handle.net/10297/0002002338

2025年度に実施した以上の取り組みは、令和7年度地域連携応援プロジェクトで採択された「静岡県浜松市浜名区滝沢町の洞窟遺跡を紹介する展示ポスター制作事業」(連携先:浜松市市民部文化財課地域遺産埋蔵文化財グループ、浜松市浜名区滝沢町自治会)として実施しました。以下のURL(短縮URLです)から報告書をダウンロードしていただけるので興味があればそちらも(8頁~11頁)ご覧ください(報告書の中には行者穴遺跡の調査について取り上げていただいた静岡新聞の記事も掲載させていただいています)。

https://x.gd/3EFRZ

 

2025年9月に行者穴遺跡の発掘調査を行いました。

こちらも少し前(2025年度)のことになりますが、2025年9月12日から9月27日の日程で浜松市浜名区滝沢町に所在する洞窟遺跡である行者穴遺跡の発掘調査を実施しました。考古学実習に関連するフィールドワークとしても実施しており、調査期間中に学部学生15名と修士課程の大学院生2名が調査に参加してくれました。

行者穴遺跡の2025年度の発掘調査の様子

行者穴遺跡の発掘調査は、1998年度に浜松市博物館によって実施され、その後、時間をおいて、2022年度からは静岡大学人文社会科学部(考古学研究室)と浜松市での共同調査として進められています。2022年度からの調査で、約2万8千~2万7千年前と約2万年前の2つの旧石器時代の文化層が残されていることが明かになりました。石器と動物遺体が出土する文化層が洞窟遺跡で発見されたのは、本州では、青森県の洞窟遺跡に次ぐ、2つ目の事例になると思われます。九州や沖縄のいくつかの洞窟遺跡でも旧石器時代の文化層が発見されていますが、全体からみるとごく少数です。日本列島ではこれまでに1万を超える数の旧石器時代の遺跡が発見されていますが、そのほとんどすべては台地上に残される開地遺跡からは、保存条件の制約から主に石器資料しか出土しません、これに対して、洞窟遺跡では石器資料に加えて、動物遺体(骨・角・歯)も保存されるため、当時の動物資源の利用の手がかりを得ることができます。行者穴遺跡での2022年度以降の調査で、約2万年前の文化層からシカ類、ニホンザル、鳥類の骨や歯が出土しています。また、加工痕跡のある骨片やその製作に関わって生じた欠片も出土しています。ニホンザルの歯や鳥類の骨、その場所での製作の証拠を伴う骨器が出土するのは日本列島の旧石器時代の遺跡としては初めての事例になると思われます。これらについて2026年5月24日に開催された日本考古学協会総会で口頭発表したところ、注目を集めました。今後そうした成果を論文として発表するとともに、今後も調査を継続する予定です。

近年の調査成果は、複数メディア(2025年11月1日静岡新聞朝刊24面【社会】、2025年12月2日読売新聞(全国版)朝刊15面【文化】)で紹介されました。

https://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=11392

学術雑誌に掲載された大学院生(修士課程考古学専攻)の論文

少し前(2025年度)のことになりますが、大学院(修士課程)に在籍していた考古学専攻の大学院生の論文が学術雑誌に掲載されました。福地朝彦さんの「釈迦堂遺跡における土偶利用の社会的背景について」(pp.35-46)は『山梨県考古学協会誌』第31号に、榛村敦也さんの「西貝塚と石原貝塚から出土した貝類遺物の再検討」(pp.1-20)は『静岡県考古学研究』No.57に掲載されました。いずれも卒業論文をもとに執筆したものです。

それ以前にも、考古学専攻の大学院生(修士課程)が執筆した論文が学術雑誌に掲載されたことが何度かありました。最近、学術雑誌に掲載された論文は以下のとおりです。

  • 外山真子2024「静岡県内出土縄文土器の敷物圧痕からみる編組製品の様相」『静岡県考古学研究』No.55 pp.1-16
  • 河原崎洸希2024「静岡平野における古墳時代前期の集落と掘立柱建物の諸類型」『静岡県考古学研究』No.55 pp.17-30
  • 井上雅也・中原康介・山岡拓也2022「縄文時代中期における神津島産黒曜石の分布とその特徴」『静岡県考古学研究』No.55 pp.85-100

これらは、外山真子さん、河原崎洸希さん、井上雅也さんが大学院(修士課程)に在籍していたときに、卒業論文をもとに執筆して、掲載されたものです。

2024年9月に行者穴遺跡の発掘調査を実施しました。

静岡大学人文社会科学部考古学研究室では浜松市とともに、浜松市北区滝沢町に所在する滝沢鍾乳洞遺跡と行者穴遺跡の発掘調査を2020年度から継続的に実施しています。滝沢鍾乳洞遺跡と行者穴遺跡はお互いに近接する洞窟遺跡です。行者穴遺跡では1998年度に浜松市博物館による発掘調査が実施され、縄文時代草創期に遡るとみられる資料が出土していました。2022年度にその調査区を再発掘したところ、後期旧石器時代後半期の初頭(およそ28,000~27,000年前)に遡る炉跡とみられる遺構や石器や動物遺体などの遺物が残されていることがわかりました。2023年度には、調査区を拡張して発掘したところ、後期旧石器時代後半期後葉(およそ20,000年前)の石器や動物遺体などの遺物が残されていることもわかりました。2024年度は9月12日から27日の16日間で行者穴遺跡の発掘調査を実施し、2023年度調査で拡張した調査区のうち、後期旧石器時代の地層まで到達していなかった区画を掘り下げました。そうしたところ、後期旧石器時代後半期後葉(およそ20,000年前)とみられる地層から石器や動物遺体などの遺物が新たに出土しました。今後、発掘調査をさらに進めるとともに、出土した資料の分析を進めて、後期旧石器時代後半期の2つの次期の文化層の内容を明らかにする予定です。なお、今年度の発掘調査は科研費基盤研究B「更新世末から完新世初頭における先史狩猟採集民の生態資源利用をめぐる研究 」(2023年4月~2028年3月 代表:山岡)の調査研究として実施されました。

2023年9月に行者穴遺跡の発掘調査を実施しました。

静岡大学人文社会科学部考古学研究室では浜松市とともに、浜松市北区滝沢町に所在する滝沢鍾乳洞遺跡と行者穴遺跡の発掘調査を2020年度から継続的に実施しています。滝沢鍾乳洞遺跡と行者穴遺跡はお互いに近接する洞窟遺跡です。行者穴遺跡においては1998年度に浜松市博物館による発掘調査が実施され、縄文時代草創期に遡るとみられる資料が出土していました。2022年度にその調査区を再発掘したところ、後期旧石器時代後半期の初頭に遡る炉跡とみられる遺構が残されていることがわかりました。今年度(2023年度)は、9月12日から26日の15日間で行者穴遺跡の発掘調査を実施し、昨年度の調査区の土層断面を記録するとともに、調査区を拡張して発掘しました。そうしたところ、後期旧石器時代後半期初頭の文化層よりも新しい時期(あるいは時代)の文化層が残されていることが新たにわかりました。今後、出土遺物の年代測定を実施して、その文化層の年代を明らかにする予定です。なお、今年度の発掘調査は科研費基盤研究B「更新世末から完新世初頭における先史狩猟採集民の生態資源利用をめぐる研究 」(2023年4月~2028年3月 代表:山岡)の調査研究として実施されました。