貴田研究室の活動報告です。この度、日本大学で教鞭をとる田中大喜先生の研究室のみなさまにお越しいただき、私たち静岡大学との「交流戦」として、大学院レベルでの学術交流がおこなわれました。主に日本大学と静岡大学に所属している現役院生や他大学での修了生が参加し、共通の専門領域である日本中世史をめぐって、互いに研鑽を深めました。
初日の8月3日(月)には、それぞれが報告をおこない、自らが積み重ねてきた研究の成果を披露しました。質疑応答では史料の解釈やそこから組み立てられた歴史像をめぐり、いくらかの疑問も相互に出されました。こうした討論のなかで各人の抱える課題もおぼろげながら見えてきましたが、今後それぞれの自己批判のなかで解決され、やがて論文化へつながっていくことが期待されます。

研究報告の場では、双方向的な討論を通じて、史料読解の精度を高めるため建設的な批判を交わすとともに、そこから歴史像を導く論証・叙述の手法を鍛えあう
- 佐野侑香(静岡大学大学院修士課程)「鎌倉期における陰陽道の展開―京都から鎌倉への伝播を中心に―」
- 柴幸太郎(日本大学大学院博士前期課程)「初期鎌倉幕府における北条氏権力に関する研究の現状と課題」
- 沼尾和輝(早稲田大学大学院修士課程修了)「陸奥国府における軍隊の形成過程―南部師行の事例から―」
- 藤原大志(静岡大学卒業、早稲田大学大学院修士課程修了)「桶狭間合戦以降の今川氏の三河支配」
- 稲川裕己(日本大学大学院博士後期課程、同大学助手)「鎌倉期足利氏所領支配の志向性」
続いて、翌日の8月4日(火)には、大学院交流のエクスカーションとして、駿河国上野郷故地に訪れました。現在の静岡県富士宮市に位置しており、中世には台地の上で畠作の村々が展開していたと推測しています。2019年以来、貴田が現地調査を続けているフィールドになりますが、田中先生をはじめ、参加者のみなさまからは中世的な農耕空間のイメージについて貴重な助言をいただきました。


現代では美しい水田が眼前に展開するが、17世紀の検地帳の分析によれば、近世の段階まではむしろ畠作が広く営まれていた


鎌倉時代の領主であった南条氏の伝承が色濃く残る小字「堀之内」の景観
なお、こちらの上野郷故地については、2023年度に採択された科学研究費・基盤研究(C)「排他的なナワバリを伴う村共同体の形成―生業論と景観論の融合から―」の一環として、現在も調査・研究を遂行しています。