共催講座「ロシア・ウクライナ問題を考える」を開催しました

12月3日(土)・17日(土)の2回にわたり、静岡市西部生涯学習センターにおいて、「ロシア・ウクライナ問題を考える」と題する公開講座が開催されました。この講座はサステナビリティセンターと静岡市西部生涯学習センターとの共催により、ハイブリッド形式で行われ、会場参加・オンライン参加あわせて45人の市民のみなさんが参加されました。

12月3日の第1回講座では、サステナビリティセンターの板倉教員(専門・国際法)が、「国際法の観点からみたロシア・ウクライナ問題」と題して、ロシア・ウクライナ間の武力紛争について、集団的自衛権、人道的介入、第三国の中立義務、核兵器使用の威嚇など武力行使の合法性(jus ad bellum)に関わる論点や、国際人道法の適用、文民・民用物の保護、戦闘方法・手段、捕虜の待遇など戦争・武力紛争の遂行方法・手段の合法性(jus in bello)に関わる論点のほか、国際人権法、ジェノサイドなどの国際法上の論点について概説。また、これまでの国連や国際社会の対応の国際法的評価についても解説しました。そのうえで、この紛争が、国連、国際社会、市民に問いかけている課題や国際法がこれから果たすべき役割や課題を提示しました。

12月17日の第2回講座では、静岡大学名誉教授の大江泰一郎氏(専門・ロシア法)が、「ロシアの『帝国的』構造-その根源にあるもの」と題して講演しました。大江氏は、ニコライ1世の時代における民法集編纂の歴史の分析をふまえて、ロシア民法には「物」「人」という概念がなく、「民法集」全体に人間支配の原理が貫徹していることを指摘。ロシアにおいては、皇帝(国家権力)の「国家的所有権」、貴族(地主)の贈与された「私的所有権」というロシア独自の複雑多様な「所有権」概念が形成され、その根底には西欧の契約社会とは異なる、一方通行性、強制性の欠如、等価性の欠如、無条件の賜物と特色とする「贈与」原理があり、それが現代ロシアにも継承されているとしこれこそがソ連崩壊後現在のプーチン大統領に至るまでの指導者たちの行動原理の核となっているとしました。

いずれの回も講演後の質疑応答では、参加者から鋭い質問・意見が寄せられ、講師と参加者のみなさんとの間で熱い意見交換が行われました。

 

第1回講座(12月3日)
第2回講座(12月17日)