地域での再生可能エネルギーの導入・促進について学ぶフィールド研修を実施しました《第3回 研究室訪問》2/28,3/2,3

 2月6日から行われた環境省「令和4年度 教育機関と連携した地域再エネ導入促進及び地域中核人材育成研修」による本学のフィールド研修のイベントレポート、第3弾では研究室訪問についてレポートします。

 これまでお伝えしてきた現地視察企画に加えて、本学独自の企画として、研修に参加する学生たちが本学で再エネに関係する研究に取り組んでいる研究室を訪問し、先生に研究のことや脱炭素社会構築に向けた思い、次世代を担う学生に伝えたいことなどをお話いただくという企画を実施しました。日程調整の都合から全員参加とはなりませんでしたが、参加した学生たちは、さまざまな専門の先生と直接お話をしたり、研究室・実験室を見学したりという初めての体験づくめの状況で、わかりやすく研究のことや研究者としても思いを知ることができ、これから大学で学んでいくうえで貴重な〈気づき〉を得ることができたようです。
 以下では、研究室訪問の概要とともに、参加した学生の感想文をご紹介していきます。

【研究室訪問①】森智夫准教授(農学部応用生命科学科)2月28日
森先生は同じ農学部の平井浩文教授とともに、キノコの白色腐朽菌を使ったバイオマス発電実用化に向けた研究に取り組んでおられます。

 研究室訪問では、森先生から白色腐朽菌の実物や実験室の様子などを見せていただきながら、研究の概要や意義などについてお話いただきました。

◇参加学生の感想◇ 農学部生物資源科学科3年・Tくん
 森先生が所属する農学部生化学研究室の主な研究対象である「白色腐朽菌」には、木材の主要構成成分であるリグニンを分解できる機能があり、この研究が進むことによって、従来では大量の薬品や大きなエネルギーを要していたセルロースなどの産生の簡易化に期待できることが分かりました。
 また私の所属する農学部生物資源科学科で取り扱っている造林学や森林生態管理学などとの関連性も大きく、ミクロな視点からのアプローチによって、森林保全にも貢献しているのだと学ぶことができました。
 今回の訪問によって、身近な存在であるキノコにも木材の利用価値を高める大きなポテンシャルが秘められており、バイオマスという観点からの「持続可能性」にさらに関心を持つことができました


 

【研究室訪問②】下村勝教授(工学部電子物質科学科)3月2日
 下村先生はナノテクノロジー研究がご専門で、この技術を活用した太陽光電池の素材開発に取組んでおられます。下村先生には浜松キャンパスの電子工学研究所やプロジェクト研究所の実験室などで研究機材などを見せていただいたり、スライドを使いながら、ナノの世界についての基礎的なお話からはじまり、研究の概要、さらには研究室に所属する多様な国出身の留学生の存在-多様性が研究にもプラスの作用をもたらしていることや再生可能エネルギーの研究・開発における文理複合アプローチの重要性などについて語っていただいたりしました。

◇参加学生の感想◇ 人文社会科学部社会学科1年・Kくん
 下村先生の非常にわかりやすい説明で、ナノレベルでの研究が進んでいること、留学生の方々からの新しい視点が思わぬ発見に繋がったことなどとても楽しく知識を得られたと感じています。

 私たちの研修の中でも、他学部の学生と話し合うことで自分にはない着眼点を知ることができ、それによって自分の興味が広がっていく経験ができました。工学部と人文社会科学部の研究内容はほぼ対極的なものかもしれませんが、お互いの内容に対するアプローチを模索することで新しい考え方、ひいては新しい学問に出会える可能性を持っていると下村先生のお話から学ぶことができました。
 先生の研究につながるような内容の研究は難しいと思いますが、これから自分の専門分野を考えていく上で重要な時間になりました。


 

【研究室訪問③】二又裕之教授(工学部化学バイオ工学科)3月2日
 二又先生は、有機性廃棄物から取り出した微生物を使った燃料電池の開発・実用化に取り組んでおられます。二又先生には、スライドを使いながら、研究の概要や実用化の現状や課題についてお話いただきました。

◇参加学生の感想◇ 人文社会科学部社会学科1年・Kくん
 化学や生物の知識が少ない私にもわかりやすい説明で、普段静岡キャンパスで授業を受けているだけでは知ることのできない情報ばかりでした。研究室訪問をしたいと申し出た最初の動機は、他学部の研究を知ることができるから、というささやかな理由から参加させていただくことになり、自分の専門との関わりはほとんどないだろうと考えていました。

 お話の中で、人文科学的なアプローチは社会実装などを進めていく上で欠かせないことを聞いて、「文系は文系、理系は理系」という今まで頭の片隅にあった考え方を取り払わなければならないと気づくことができました。人文社会科学部の中だけで様々なことを学んでいても得られない新しい視点を得られたと感じています。
 私はいま、生命倫理や死生学の分野に関心があり、今後はそのような研究をしていきたいと考えています。生命倫理を学ぶ中でバイオテクノロジーは欠かせないテーマであり、その知識を正しく理解している必要があると考えています。自分の専門分野と今回の訪問で得られた内容をどう繋げられるかを考えることで、学びの深め方に変化が表れてくると思っています。文理という考えを越えて自分の興味が広がり、自分にしかできない研究をしてみたいと強く感じられる機会になりました。


 

【研究室訪問④】木村浩之教授(理学部地球科学科)3月3日
 木村先生は、岩盤体から湧き出る温泉から出るメタンガスや微生物を使った発電についての研究に取り組んでおられ、すでに県内外でこの研究を活かした実用化が進んでいます。木村先生にはスライドや動画を使いながら、研究の概要や実用化の現状や課題、さらに研究と循環経済の確立や地域創生とのつながりなどについてお話いただきました。その後、今回の研修に参加していた同研究室所属のIさんの案内で、実験室も見学させていただき、実験機材や学生たちが取り組んでいる実験などについて説明してもらいました。

◇参加学生の感想◇ 農学部生物資源科学科3年・Tくん
 木村先生のお話は、温泉メタンの有効活用および微生物メタネーションは、太陽光発電や風力発電のようなCO2を排出しないという発想ではなく、再利用することで、結果的に排出量削減を目指すという考え方であったため、新たな切り口の「持続可能性」を知る機会となりました。

 また、「分散型エネルギー生産システム」は、防災としての役割も果たすことを知り、私の所属する農学部が研究する山地保全などと関連性があると感じました。学部が異なるからこそ、防災やエネルギーという一種の分野に多方向からのアプローチが可能になるのだと、大きな学びを得ることができました。
 木村先生の研究は、環境分野においての3つの重点課題とされている「脱炭素」、「循環経済」、「地域創生」、すべてに注力した研究であったため、今後のメタン利用の可能性とその動向に大きな関心を持つことができました。