こちらも少し前(2025年度)のことになりますが、2025年9月12日から9月27日の日程で浜松市浜名区滝沢町に所在する洞窟遺跡である行者穴遺跡の発掘調査を実施しました。考古学実習に関連するフィールドワークとしても実施しており、調査期間中に学部学生15名と修士課程の大学院生2名が調査に参加してくれました。

行者穴遺跡の2025年度の発掘調査の様子
行者穴遺跡の発掘調査は、1998年度に浜松市博物館によって実施され、その後、時間をおいて、2022年度からは静岡大学人文社会科学部(考古学研究室)と浜松市での共同調査として進められています。2022年度からの調査で、約2万8千~2万7千年前と約2万年前の2つの旧石器時代の文化層が残されていることが明かになりました。石器と動物遺体が出土する文化層が洞窟遺跡で発見されたのは、青森県の洞窟遺跡に次ぐ、2つ目の事例と思われます。九州や沖縄のいくつかの洞窟遺跡でも旧石器時代の文化層が発見されていますが、全体からみるとごく少数です。日本列島ではこれまでに1万を超える数の旧石器時代の遺跡が発見されていますが、そのほとんどすべては台地上に残される開地遺跡からは、保存条件の制約から主に石器資料しか出土しません、これに対して、洞窟遺跡では石器資料に加えて、動物遺体(骨・角・歯)も保存されるため、当時の動物資源の利用の手がかりを得ることができます。行者穴遺跡での2022年度以降の調査で、約2万年前の文化層からシカ類、ニホンザル、鳥類の骨や歯が出土しています。また、加工痕跡のある骨片やその製作に関わって生じた欠片も出土しています。ニホンザルの歯や鳥類の骨、その場所での製作の証拠を伴う骨器が出土するのは日本列島の旧石器時代の遺跡としては初めての事例になると思われます。これらについて2026年5月24日に開催された日本考古学協会総会で口頭発表したところ、注目を集めました。今後そうした成果を論文として発表するとともに、今後も調査を継続する予定です。
近年の調査成果は、複数メディア(2025年11月1日静岡新聞朝刊24面【社会】、2025年12月2日読売新聞(全国版)朝刊15面【文化】)で紹介されました。