ドイツ生まれの世界最小APRSトランシーバ「PicoAPRS」ファーストインプレッション

かねてより注目していた「PicoAPRS」をドイツから取り寄せた。試用したので以下簡単に報告する。

☆カタログに示されたスペック:

カタログスペックの一部をを、日本語表記する。原典はこちら→http://www.db1nto.de/index_en.html

大きさ:2.4cm×3.3cm×5.8cm(概算、突起物を含まない)
重さ:アンテナを含まず約50g(バッテリーとケースを含む)
周波数帯:いわゆる2m帯
表示部:128×64ピクセル有機LED
電源:内臓850mAhリチウムイオン USB接続で外部から充電可能
操作:本体ボタン(またはUSB接続により一部のコマンドのみ設定可能)による


写真1: 大きさのイメージ(白シールは筆者が貼付、アンテナ端子にダミーロードを装填)

この大きさは驚異的な小ささである。煙草の箱の体積と比較すると2/5ほどである。実機については、カタログなど掲載の写真からもつ印象に対し「思ったより厚みがある」といったところではある。

考えるまでもなくAPRS専用機である。マイクもスピーカーも内部外部に接続する必要はない、小さくなって当然といえば当然ではある。

また、KISS-TNC機能や、受信したAPRSメッセージをモールス(内部に超小型圧電ブザーあり)で知らせる機能があるほか、徹底した省エネ設計が随所にみられる。特に「外部電源としてUSBから電圧を供給中(フローティングで充電している)に電源が切れた(車のイグイグニッションのオフに相当)場合、再度電源を投入するまで本機の電源も自動的に落ち、電源が入ると自動起動する」「移動していない場合はAPRS電波を発射しない」という構成はなかなか秀逸である。

☆主要な構成:

基板類がばらばら(はんだ付けなどは完了)の状態な「キット」として頒布しているが、筆者が入手したものは完全に組みあがった状態であった。そのため、以下の写真のように外装ケースを開き中を観察した。


図2~4 内部構造

主要構造は「ATmega328 ATmega1284p」を使ったArduinoライクの制御基板、送受信モジュール、GPSモジュール、電池、である。外装ケースは3Dプリンターで製作した”ような印象”である。

ATmega328 ATmega1284pで、送受信モジュールの制御及び、APRS用のパケット信号のエンコード・デコードを行っている。
公表されている回路図は以下図5の通りである。高周波関係を中心に記述してあるが、微妙なところは、公開されていない。また送受信モジュールがDORJIとされていて、具体的な型番は不明であった。


図5 高周波まわりの回路図(公表されている部分)
[出典:https://drive.google.com/file/d/0Bz49Vwfc_T-wejRrYzJRbTRQR1U/view?usp=sharing]

☆送信モジュールは何か?

DORJI社は、今流行の「中華トランシーバ」に搭載可能な、2m/70cm帯の送受信モジュールを製造販売していることで著名である。しかし、同社製の送受信モジュール(例示としてこれ→ PD0ACのサイト )は、チャンネル幅が「25kHz/12.5kHz」ステップであることが多く、APRSの1200bps周波数(米国144.39MHz・欧州144.80MHz・中国144.64MHz・日本144.66MHz、PicoAPRSの取り扱い説明書では日本の周波数は144.740MHzとなっているが、これは誤解であろう)をカバーしようとすると、なにか大きな改造が必要なのではないかと思っていた。

図6 各地のAPRS周波数(出典:http://www.aprs.org/)

到着した実機を見ても型式番号は無く、これを日本で使用するためには「保証認定申請」をしなければならないが回路図(またはブロック図)と共に送信モジュールの情報入手は不可避なので、このあたりはどうしようと考えていた。

しかし公開されている「開発者ブログ」に、一言だけそれっぽいモジュールの話があり、ついに検索して、DORJI社ではないところのメーカー名や型式が判明した(お楽しみなので、ここでは記述しない(勿体ぶってすみません))。なるほど、このモジュールでは、5kHzセパレ―ションで周波数設定が可能である。

ただし、送受信モジュールの周波数可変範囲は「134MHz~174MHz」と中華トランシーバと同じである。

☆果たして保証認定は可能だろうか?

認定基準が公開されてるのかどうか不案内だが、2mの自作機(輸入・逆輸入機を含む)の認定に関して巷の噂を総合すると、
1)外国仕様既製品の場合は、米国仕様機はNGで、周波数帯域が日本と同じな欧州仕様機はOK
2)ソフト的ハード的にオフバンド送信ができないことの証明 の説明責任あり
ということであった。

このうち、1)について、これをメーカー製品といえるかどうか、は開発スタッフと文通して以下の事を把握している。「開発チーフのDB1NTOはじめスタッフは、ドイツで電気通信機器を製造販売する許認可を持っていない。そのため、この許可を持つWiMo社に最終的な製造販売を委託している」、ということで既製品。
そして2)についてであるが、これは分析検討結果、以下の結論を得ている。
・送受信モジュールのUART転送速度は9600bps固定、ATMega1286pのユーザ側転送速度は11520bps固定であり、外部USBから直接モジュールの制御はできない信号構成。
・ATmega内ソフトによって欧州バンドプランから逸脱できないよう設定があり、この部分を外部コマンドで書き換えることはできない。本体スイッチで周波数を設定できるが、MHzの百の位と十の位の「14」は変更できず、一の位は4→5→6と可変できるが6と設定したら小数点以下の位の設定ができないようになっている。またMHz一の位の0~3、7~9もそもそもが入力できない。

以上のことを総合して、「保証認定される可能性高し」と判断、過日申請書を担当に送付した。めでたく免許されたか、残念ながら否だったかについては、審査結果が到着してから追記する。

図7 送信器系統図、各種諸元の例(モジュール部分は墨ですみません)

※外部コマンドをどう入力しても、または本体スイッチ類をどう操作しても、PTTスイッチ的な「連続送信させる」機能を実現できないため、実機としてのスプリアス等の測定は困難である(やろうとするならば、本体をほぼ分解し送信モジュールだけ取り出して行う、などとなる)。また、電源を投入するとAPRS専用機なので一定時間ごとに位置情報を自動送信する。免許が得られるまでは、アンテナ端子に疑似空中線を接続し、法令順守及び送信デバイスの保護に留意する必要がある。

なお、当方のアマチュア無線の局免許であるが、移動しない局が東海総通管轄、移動する局が前任地信州大学在職中に取得した関係で信越総通管轄である。よって、本機(移動しないとほぼ意味が無い)に貼付したシール、あるいは本機に投入しているコールサイン情報は信越のそれである。

8月16日追記>>

本機はTSS殿により保証認定され、信越総合通信局より免許になった
なお、保証認定にあたり、TSS殿から「より適切な表現となるよう、(上記図7の内容に関して)補正」のご指導を頂戴した。ここに記して謝意を示す。

また、筐体の蓋部分に3Dプリンターで「コールサインの刻印とストラップ用の穴の設置」を行った。オリジナルとの差異を出すため、あえてオレンジ色のインクで印刷した(最終的には黒で印刷予定)。

今後の参考のため、当該3Dプリンター用のデータファイルをTinkerCAD(及びMyMiniFactoryのサイトにアップロードした。今後同機種を輸入する方は、コールサインの部分を変更して楽しまれることを期待する(なお、静岡大学wwpのポリシーにより、「.stl型式」のファイルのアップロードができないのでこのような形となった)。
ここをクリック→「TinkerCAD」「MyMiniFactory」。

<<追記ここまで

10月18日追記>>

開発者のツイート情報によると、米国無線機販売店「HRO」にて取扱いが開始されたとのこと。
参考:https://twitter.com/PicoAPRS/status/916352337106653184

また、ファームウエアの更新が行われた由。

<<追記ここまで

10月19日追記>>
★CQ誌11月号に記事が掲載されました。
詳細はこちら→ http://ham.cqpub.co.jp/2017/10/18/cq-ham-radio-201年11月号/

★DB1NTO Taner Schenker さんから連絡があり、以下を追記(訂正)します。
1) 本機はEU standerdである”CE” の承認を得ています
2) エンクロージャはしっかりと工場で作ったもので自家製3Dプリンター製ではない(大変失礼しました)
3) プロセッサーは ATmega1284pであって ATmega328p ではありません。
 上記記事を修正しました。CQの記事は間違っていません。

<<追記ここまで

 

10月27日追記>>

★DB1NTO Taner Schenker informed me as follows. It is VERY GOOD NEWS!

WiMo send me some information about PicoAPRS for Japan.
Shipping is now possible for 36€ instead of 170.50€ via UPS!

(japanese:邦訳)DB1NTOタナーさんから以下のビッグニュースが届きました!
WiMoが私宛日本向けPicoAPRSに関する情報を送ってきました。
送料が、UPSの170.50ユーロに替えて36ユーロとすることが可能になりましたよ!

★WiMo社の日本代理店の方からも情報をいただきました。サイトはこちら→http://webshop.tupartners.com/
その情報によれば、「リチウム電池を含むため発売当初はその性格上慎重を期してUPSを利用していましたが、現在は国際小包便で発送が可能になっている。これによる送料は35.1ユーロです」とのこと。1万円以上安くなるのですからこれは凄いニュース!
さらに関連情報も頂きました。
1) 記事中で小生が指摘した「9600bps対応」と「スマートビーコニング対応」について。
前者は出力モジュールの関係で困難、後者は権利関係(鈴木推測:特許とかかな?)で困難、とのことでした。
2) 記事中PicoAPRSはキットで、と記しておりましたが現在はキットではなく完成品で販売している、とのこと。

<<追記ここまで