D-starレピータ「浜松静岡大学430(JP2YIC)」開局

「浜松キャンパス設置のD-starレピータ」が5年3月13日開局(D-star網に接続)します。

435MHz帯アマチュア無線を利用できる免許(従事者および局・局免許においては電波の型式F7W)を受けている方で、日本アマチュア無線連盟のD-star利用者データベースに登録(無線連盟の会員である必要はない、登録は無料)している方であれば、どなたでも利用できます。このレピータ局の利用も無料(寄付のお願いが行く可能性は否定しませんがその場合でも応じるかは任意)です。
日本アマチュア無線連盟「D-STAR登録申込」ページ→https://www.jarl.org/Japanese/7_Technical/d-star/application-rule.htm

【諸元】
以下の表のとおりです。

コールサイン JP2YIC
呼称 浜松静岡大学430
周波数 (装置の送信)439.11MHz
(装置の受信)434.11MHz
電波型式 F7W(いわゆるDV)
出力 10W(通常時)
空中線 単一型(5λ/8 2段・6.0dBi)
位置 緯度:北緯34°43′32″
経度:東経137°43′0″
空中線高さ:海抜約80m
運用時間 常時

無線局の免許人は日本アマチュア無線連盟で、「JP2YIC局管理団体(学内の正式名称は”静岡大学浜松D-starレピータ管理団体(代表・鈴木)”です。)」が連盟から委嘱されて管理します。無線設備の費用はイニシャルコスト分として「静岡大学高柳記念未来技術創造基金」の援助を受けています、ありがとうございます。

【D-starレピータ】とは
資料(アイコム社「初心者のためのD-STAR入門」→https://www.jarl.com/oita/pdf/D-Star%20Manual.pdf)にある通信方法のうち 「山かけ通信」「GW(ゲートウエイ)通信」を司るレピータ(無線中継)システムをいいます。日本アマチュア無線連盟が開発したシステムで、世界中に普及しています。

※前述のアイコム社の資料5ページ目から筆者が切り抜き調整しました((c)アイコム)

アマチュア無線の世界では、自身の無線従事者資格に応じて周波数や電波型式等を自由に選択して通信ができます。しかし一般的に「遠距離通信」を行おうとする場合は設備特にアンテナが大掛かりになります。日本全国、あるいは全世界と交信しようとする場合一般的に短波帯が用いられますが、海外との交信に利用される代表的な周波数14MHz帯を使用する場合その波長は20mであり、構成する「波長(λ)の1/2」のアンテナの長さは10mとなり、このような大きなアンテナは昨今の住宅環境では展開・実現が難しい状況です(国内交信中心の7MHz帯のλ/2は20m、さらに2倍の大きさになります)。また通信に電離層を利用する関係で通信状態に波(季節性の他、同じ日でも昼間と夜でも状況が違う)がありなかなか安定して交信することができません。

D-starレピータを利用することによって、アマチュア無線家(レピータユーザ)は
①最寄り基地局との間の通信は小型の設備ででき
②電離層の部分は「インターネット網」で代行し
③遠方のネットで接続されたレピータから再送信する方法で通信を行う
事が可能になります。これにより、大きな仕掛けを設備しなくても(ネットでつながっているレピータを介して)遠距離との交信が可能になります。

ユーザにとって大きな設備が必要ではない、ということはさらに次のような波及効果があります。
①頑張ればお小遣いでも買える無線機で広範囲の交信ができるので、児童生徒のアマチュア無線へのアクセシビリティが向上
②災害時等の緊急の通信インフラの提供(軽量の可搬システムで通信が提供・ユーザ局のマッピングによる可視化が可能)
③D-starシステムを使った新しい通信システムの研究の場の提供 等。

【カバーエリア】
JP2YIC浜松静岡大学430D-starレピータのカバーエリア(PC上のシミュレーションを基にする)は以下図の通りです。

※アプリ Radio Mobile By Roger Coudé VE2DBEに拠ります

無線機に小型の「外部アンテナ(利得2dBi程度を想定)」を接続した場合、図中の青い区域が「問題なく利用できるエリア」、黄色い部分は「不可ではないが厳しいエリア」を示しています。

大雑把な言い方をすると、「天竜浜名湖鉄道線の南側」「小笠山の西側と南側」「豊橋市南部」「渥美半島の南岸」がエリアであると言えます。ただしこれらのエリアの中でも「磐田原台地の東側のがけ下」など一部厳しめのエリアは散在しています。

注意)富士山富士宮口五合目より上、伊豆スカイラインなど見晴らしの良い場所もカバーエリアなのですが、同じ周波数を使っている木更津(あるいは六甲山)のレピータも同時にアクセスする危険があります。見晴らしの良すぎる場所ではレピータを使わない交信に挑戦し、当レピータへのアクセスはご遠慮いただきたく。そのため遠方でレピータが使える部分は表示しません。

【フォトギャラリー】
ささやかですが、撮りました。

★動画(撮影は管理団体メンバーのJO1LWF/2氏):外部リンクでお願いします
JP2YIC アンテナからの眺め(北西→西→南→南東・浜松駅方面)→https://youtu.be/AeLmBWA0Jx4
JP2YIC アンテナからの眺め(北西→北→東→南東・浜松駅方面)→https://youtu.be/vezbYvIF360

★静止画(鈴木が撮影)

↑レピータ装置を収納したウォルボックス。当初建物屋上に物置きを建てようと思っていましたが建築基準法上など問題があり、この形式に変更。

↑ボックス内の様子。サーバー用のPCがボックスの上にありますがこれはソフトウエアの調整作業をしている状態。通常はPCの蓋を閉じてボックス内に収納しています。

↑10階建て棟のさらに上にエレベータの機械室(11階に相当)がありさらにその上に受水槽があります。その梯子にポールを添えてアンテナを設置しています。

↑総合棟を南側から見た図。避雷針の右にアンテナが見える。なお、今回のアンテナは一応避雷角の中には入っていますが直撃されない保証は…。

【管理団体メンバー】
0次 JR2BEF・JJ5FFH/2・JO1LWF/2・JE2DZC・JK2KNH
1次 JR2BER・JE2RAE(さらに募集中)

【経緯】
令和3年9月:「(仮称)静岡大学浜松D-starレピータ管理団体」結成
電波利用・混信状況の調査を行ったのち日本アマチュア無線連盟に「開設要望書」を提出
令和3年10月:管理団体0次メンバーのうち学外の者を「静岡大学教育研究支援員」として委嘱
令和4年4月:日本アマチュア無線連盟から「浜松市中区城北」に設置するレピータ局の公募、同応募そして採択
令和4年7月:JP2YIC局免許状が総務省東海総合通信局から交付、無線連盟経由で管理団体へ委嘱される
令和4年9月:中継装置( ID-RP4010V2号機)納品
令和4年10月:局舎工事緊急中止(建築基準法対応などのため)
令和5年1月:局舎設置に関する措置完了し局舎工事を再開して竣工
令和5年2月:局舎に中継装置据え付け、空中線の設置。試験電波(D-star網未接続で)の発射開始
令和5年3月:正式開局(D-star網接続は3月13日月曜日大安)

以上です。