2025年3月26日 静岡ワイルドガストロノミー協議会発足

2025年3月25日に静岡市から発表がありました静岡ワイルドガストロノミー協議会の発足にあたり、3月26日にヒトヤドホールで発足式が開催されました。産官学が連携して静岡市の山間部、平野部から沿岸部までのそれぞれの地域に固有の豊かな自然・景観・文化資源を「ワイルドガストロノミー」の観点から再評価し、その価値を地域内外および国際的に発信し学び合うことで、静岡市のプライドとブランド力を高めることを目標としています。横濱副所長が副代表で入られ、発酵研の他のメンバーも幹事をつとめます。ストーリー性のあるワイルド酵母を地域活性化につなげていければと思います。

2024年12月14日 伊勢角屋麦酒見学

鈴木実佳教授、宮地紘樹掛川東病院院長、および発酵研広報の依岡で二軒茶屋餅角屋本店に伺いました。伊勢角屋麦酒鈴木成宗社長にひとつひとつ説明を伺いながら見学することができました。順を追ってご報告します。

二軒茶屋餅

鈴木社長は天正年間(1575年)創業の二軒茶屋餅21代目社長でもあります。見学は二軒茶屋餅から始まりました。

二軒茶屋餅の「二軒」は現存するお餅屋の「角屋」とお料理を提供していた「湊屋」が向かい合って二軒あったことから名付けられました。現在湊屋はなく、角屋でお餅が提供されています。角屋の建物は底上げして90度回転させて、現在の向きになりました。

二軒茶屋餅のお餅はきなこをまぶしたあんこ餅。柔らかくて歯切れが良いお餅でした。

味噌蔵(醤油・味噌醸造場)

二軒茶屋餅は大正12年(1923年)から味噌・醤油の醸造業を始めています。二軒茶屋餅から歩いて数十歩のところに位置する味噌蔵をご案内いただきました。

二軒茶屋餅では赤味噌と醤油を創業時から変わらぬ製法で作っていること、鈴木社長は子供の頃から味噌蔵で遊んでいて酵母と親しまれていたことを伺いました。伊勢角屋麦酒の原点はこの味噌蔵にあるようです。

伊勢では一年中しめ縄を飾るそうです。味噌蔵の裏にあるまっすぐな道は路面電車の線路の名残であることも伺いました。

麦酒蔵(神久工場)

1994年に酒税法が改正され、第一次地ビールブームが起こりました。伊勢角屋麦酒は1997年に二軒茶屋餅向かいにビール醸造所と併設レストランを作りました。

現在ビール醸造は下野工場で行っており、ここではビールを作っていないようですが、当時のままの設備を残しています。ここに醸造所を構えた当初のお話を伺いました。「ビール作りの8割は清掃」という格言は印象深かったです。

現在「びやぐら」では二軒茶屋餅の醤油やポン酢、伊勢角屋麦酒のビールとグッズが販売されております。二階ではビールを飲むこともできます。この店舗ではバレルエイジドビールなどの実験的ビールも販売しています。

民具館

二軒茶屋餅の隣、川沿いに蔵が建っており、そこでは民具や道具などの古物が所蔵されています。昔はここが舟着場で、舟を降りた乗客が角屋と湊屋で休憩を取ったそうです。

角屋と湊屋にまつわるものもあれば、伊勢および三重など地域の骨董品・貴重品なども所蔵してありました。古い灰色のレジスターはおよそ10年前までお店で活躍していたようです。

下野工場

伊勢角屋麦酒が軌道に乗るまで、幾多の試練がありました。詳細は鈴木社長の著書『発酵野郎!―世界一のビールを野生酵母でつくる―』をご覧ください。ビール販売が好調になり神久工場が狭くなりつつあった2018年に下野工場が誕生しました。現在伊勢角屋麦酒のビールはここで製造・出荷されています。現在下野工場の見学は有料で受け付けられています。

工場の中の設備をくまなくご紹介いただきました。ここで紹介している写真はその一部です。撮影が許されない研究室も備えており、20種類ほどの野生酵母が保管されていることを伺いました。研究室では酵母の培養も可能で、野生酵母を使ったビールも製造されます。伊勢角屋麦酒定番ビールのひとつ「ヒメホワイト」は鈴木社長が採取した野生酵母 KADOYA1 を使ったビールです。東京駅110周年記念「TOKYO STATION JR PALE ALE」は日本初の鉄道の起点であった新橋駅に咲いていたボケの花から採取した酵母を使っています。

最後に二階の社長室を見学させていただきました。ビアコンテストで受賞した数々のメダルや盾が飾ってありました。世界各地の醸造所、特に発酵研で過去に調査したビアツーリズムに関する意見交換を行ったほか、会社経営や地域コミュニティ形成など、ビール・発酵食品以外のお話もたくさん伺いました。鈴木社長は毎朝社員の日報を読んでいること、鈴木社長が選定した書籍の読書感想文に鈴木社長がコメントを付記することなど、社員とのコミュニケーションの取り方のノウハウも印象に残りました。

二軒茶屋餅は来年で450周年を迎えます。それに合わせるのはおこがましいですが、伊勢角屋麦酒とのコラボ商品製造を目指し、これからも発酵研は研鑽を続きていきます。

伊勢角屋麦酒外宮店と内宮店

製造されたビールを自社店舗で販売するノウハウを調査するため、伊勢市内にある伊勢角屋の外宮店と内宮店を視察してきました。現在伊勢角屋麦酒のタップを飲めるお店は東京と伊勢にあります。

外宮店

外宮店は4タップが設置されており、プラカップでビールが提供されます。この店舗では缶と瓶も買え、発送もしてもらえます。また、二軒茶屋餅のお持ち帰りのお餅も販売されています。

内宮店

内宮店は6タップが設置されています。また、牡蠣串などの食べ歩き商品もあります。奥には食事を提供するレストランも設置されています。

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2024年11月4日、11月11日 FM IS 「集まれ!静大三余塾」

FM IS の番組「集まれ!静大三余塾」(【提供】国立大学法人静岡大学・沼津信用金庫)に出演します。

11月4日(月)16時15分~ 大原所長(研究所、静大祭・浜松キャンパスのテクノフェスタの紹介)
11月11日(月)16時15分~ 辻佐保子先生(ご専門の紹介、伊豆でのフィールドワーク)

radimo(レディモ)というアプリで聴けるそうです。また放送後に番組HPにアーカイブスがアップされるとのことです。

現在アーカイブを視聴していただけます。ぜひお聴きください。

【アーカイブ】

2024年10月23日、24日「発酵食品ワールド出展」報告

2024年10月23日、24日にAichi Sky Expo(愛知国際展示場)で発酵食品ワールドが開催され、静大・発酵研からも出展しました。発酵研が取り組んでいるプロジェクトを紹介し、より広い連携関係の構築を目指す目的です。 展示では、井川の野生酵母と農学部藤枝フィールドの柑橘でつくった発酵シロップの試飲をはじめ、家康公CRAFT、フジヤマハンターズビールからは発酵研との共同で製造したNew Gruit Beer in Progressとヤチヤナギ、丸徳商事からは廃棄物を発酵させた肥料で栽培した大生姜、これを用いたビールとジェラートをご覧いただきました。ブースを訪れた多くの方々が私たちの説明に耳を傾けてくださいました。

2日間で8000人を超える来場者があり、開幕から閉幕まで発酵研にも多くの方が訪れてくださいました。発酵研の展示には訴求力があるとAmazonさんにお褒め頂きました。

丑丸先生、木村先生がご作成くださった資料をもとに横濱先生が二日にわたり発酵カレッジセミナーでお話されましたが、巧みなプレゼンに立ち見が出て立錐の余地なしの人気でした。

ヤチヤナギによるグルートビールのプロジェクトには他大学の理系の先生方が感じ入っておられ、これは文理融合でなければとてもできないことと、こちらとしては背中をみてお手本としてきた他大学の研究者の方たちに励まされ元気が出ました。また野生酵母にこだわってビールをつくっておられる伊勢角屋麦酒の鈴木社長もお見えになり、酵母開発についてご教示くださいました。 厳しいながらもためになるご意見も頂くことができ、連携の輪も広がりそうでとても有意義でした。

2024年10月23日、24日 Food style 発酵食品ワールド

Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催されるFood style 発酵食品ワールドが10/23、24に開催されます。 静大・発酵研もフジヤマハンターズビールさん、丸徳商事さんと一緒に出展します(発酵研出展詳細)。

Expo では 10/23(水)14:20-14:50に発酵カレッジセミナー「発酵飲料・食品で静岡を盛り上げる」と題して横濱副所長が登壇されます。

ご参加頂ければ幸いです。

2024年8月27日 ふじのくに学(魅力ある食と地域づくり)

8月27日(火)に静岡県立大学一般教育棟1階2109室にて、ふじのくに地域・大学コンソーシアムが主催するふじのくに学(魅力ある食と地域づくり)の授業を大原所長が担当しました。当日は大雨で鉄道が一部区間で不通になるなどしましたが、参加された皆さんは熱心に受講してくださいました。

静岡県が推進するガストロノミーツーリズムの世界の先進事例として、スペインの取り組みをいくつか紹介しました。第一に取りあげたのは、有数の観光地であるバルセロナです。アシャンプラ地区(ショッピング)、ゴシック地区(歴史文化)、カンプノウスタジアム(サッカー)、地中海リゾート、近郊のジローナ、フィゲラス、シッチェス、タラゴナ、カダケスなど、魅力的な観光地が何段にも連なっていて、観光客が長期で連泊したくなるだけの観光資源が備わっています。あわせて、バルセロナの地産地消のガストロノミーツーリズムの最新情報を提供しました。静岡も港町やサッカー文化などで、バルセロナと重なるところが少なくなく、参考になるところがかなりあるように思います。

また、ガストロノミーツーリズムで世界で随一の地域となったバスク地方についても、あらためて報告しました。観光スポットに恵まれていないなかで、食を通じて観光誘致を行うことに成功したバスクの事例から静岡が学ぶべきことは多くありそうです。あわせて、世界遺産サンティアゴ巡礼路の整備・誘客は、たとえば伊豆修験など、歴史的に宗教と結びついてきた道を再発見・再構築することが、観光人口さらに交流人口・関係人口を増やしていくうえで有望であることを物語っているでしょう。

人口減少に歯止めをかけるために何ができるか。地域で、企業と行政、大学が連携しながら、試行を繰り返していきたいと思っています。

2024年9月12日 静岡ガストロノミーツーリズム研究会 第3回「地域との共生:静岡市における賑わいの再生」

2024年9月12日(木)14時から静岡ガストロノミーツーリズム研究会第3回「地域との共生:静岡市における賑わいの再生」が開催されます。パネルディスカッションに横濱副所長が参加されます。

参加には参加登録が必要です。ぜひご参加ください。

2024年7月31日 SBSラジオ「ゴゴボラケ 3時のドリル」

静岡新聞の橋爪教育文化部長が7月20日(土)の南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念連続シンポジウム 第3回「南アルプス高山植物由来酵母とウイスキー&交流会」ご来場頂き、番組内の静岡トピックスで取り上げて下さいました。

南アルプスの高山植物から分離した酵母による静岡のウイスキーの話のなかで二つのキープレーヤー機関があります。

一つは南アルプスの井川蒸留所で、標高1200mの日本一高いところにある醸造所で、木賊湧水の水を使ってウイスキーを作っています。椹島ロッジのさらに奥にあり、車で4時間20分かかったそう。ジャパニーズウイスキーは3年熟成させなければならず、この秋からいよいよクリアしたウイスキーが世に出ます。

もう一つは静岡大学学部横断産官学連携文理融合組織である発酵とサステナブルな地域社会研究所(通称「発酵研」)で、静大各学部のジャンルを横断し串刺しにした研究組織で、中世ヨーロッパのビールを再現したいところから始まり、去年の家康公クラフトの発売に至っています。徳川家康ゆかりの場所から花酵母を採取してオリジナルビールを作るプロジェクトは市の観光振興と大河ドラマ『どうする家康』とタイミングが合い、静岡市内のアオイブリューイング、Horsehead labs、静岡醸造の3つの醸造所から三種類作られました。すぐに売り切れてしまいなかなか飲めないビールとして記憶されています。

この二社がコラボして発酵研で採取した南アルプス高山植物由来酵母でウイスキーをつくるプロジェクトが進んでいます。麦芽を糖化させて発酵させるビールと途中まで作り方が同じモルトウイスキーを南アルプスの酵母も使ってつくるというものです。

SBSラジオの読み上げニュースでも告知して頂いた「南アルプス高山植物由来酵母とウイスキー&交流会」では興味深い話がいくつもあり、なかでも沼津工業技術支援センターバイオ科の鈴木主任研究員がヤマザクラやモクレン、シャクナゲなどから分離した酵母にどれだけ力があるかを分析した話がおもしろかったそうです。サッカロマイセス・セレビシエのなかからアルコールを作り出す力が強い4種類と市販のエール酵母、ウイスキー酵母を分析し、野生酵母4種類中4種類がアルコール発酵能が高く、ウイスキー醸造のポテンシャルがあると結論付けられています。

ハクモクレンの酵母のウイスキーは口に含むと野生の草木のかおりが口に広がり、水を加えると荒々しさが甘くなりけれども芯の部分は崩れない骨格の強さを感じたそうです。このニューボーンは2027年にウイスキーになります。南アルプスの酵母で醸したウイスキーが南アルプスで眠っているのは夢があり、クラフトビール王国、吟醸王国、そこにもってウイスキーの面白い展開が期待できます。

最後に南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念連続シンポジウム 第4回 「南アルプスの水と酒造り」についても告知して頂きました。

10月13日(日)14時00分~16時20分にレイアップ御幸町ビル 5-D会議室にて開催されます。今度は日本酒の話で女泣かせで有名な大村屋酒造場の日比野さんは静岡大学大学院農学研究科出身の異色の経歴を持つ杜氏さんが「南アルプスの水と酒造り」についてお話くださいます。7月講演会で発表された鈴木さんが清酒造り、静岡県オリジナル種麹について、また人文社会科学部の貴田先生が「室町時代における酒造業と社会」と歴史について講じて頂くという理系的話と文系的話が混在するシンポジウムです。

このようなシンポジウムを通して知って飲む、そして蘊蓄があればあるほどそれぞれのお酒に対する愛着、作り手への尊敬、そしてストーリーや歴史、作られている場所のバックボーンを知れば知るほど県外の人に教えたくなる、酒は文化遺産であるとしていました。