井川自然の家でBBQ

2年前に南アルプス地区の植物から野生酵母を単離する研究を始めてから、この地域に魅せられています。特に、豊かな自然がもたらす空気の清々しさは本当に気持ちよく、静大から車で2時間でこの空気を味わえるのはとてもありがたいと、訪れる度に思っていました。ただ植物採集は参加できる人数に限りがあり、学生をあまり連れていかれませんでした。そこで、7月の上旬に、研究室のメンバーと南アルプスユネスコエコパーク井川自然の家(静岡市)に行き、バーベキュー(BBQ)パーティをしてきました。

参加者は農学部・木村研究室のメンバーで総勢11人です。3台の車にBBQ用の食料や飲み物、調理道具、食器類を積みこんで行きました。

井川自然の家は静岡市のいわゆる林間学校向けの施設ですが、一般でも利用できます。大人数用の大きな部屋に加えて、一部屋に4-5人泊まれる小さな部屋もあります。今回は特別室という新しい部屋が空いていたので、そこに宿泊しました。

BBQは部屋の目の前にあるスペースでできます。BBQの道具も、事前予約でレンタルできます。調理器具もレンタルできますが、節約して持参しました。

昼過ぎの出発でしたが、ゆっくり寄り道しながら行きましたので、到着すると、さっそく、全員がテキパキとBBQの準備を始めました。火起こしもうまくでき、飯ごうで炊いたご飯もふっくらとできました。カレーのルーも時間はかかりましたが、美味しく完成。焼きマシュマロは大人気。あぶって茶色くなり柔らかくなったマシュマロをビスケットにはさみ、チョコレートのソースをたらして食べると、これはうまい!という唸り声が出てきます。野菜も焼き肉用の肉もおいしく、皆たらふく食べることができました。研究補佐員の樋口さんが持参した手作りのピクルスも、絶品でした。

食事が終わると、広場に移動し、花火をしました。辺りは真っ暗の中、花火が美しく煌めいていました。そして、学生たちは、いかに「映え」する花火の写真が撮れるかを競い合っていました。

梅雨のさなかで天気が心配されましたが、私たちが行っている間、曇ってはいましたが雨は降らず、また暑くも寒くもなく大変快適でした。翌日は雨でしたので本当にラッキーだったと思います。自然の中で、美味しくて清々しい空気を堪能できました。ミヤマクワガタもひょっこりでてきて、これには男子学生たちが大興奮していました。(彼らはすでに成人なのですが。)

朝は7時半に予約していた朝ごはんを、広い食堂でいただきました。その後、BBQの後始末、部屋の掃除をしてから、出発しました。

費用は、宿泊料+BBQの器具レンタル料+朝食で、一人3000円ほどでした(食材、飲料は別)。部屋はとてもきれいです。天候が良ければ、星空も存分に堪能できるでしょう。学生たちは、「また行きたい!」と言っていました。本当に、なんだか夢の中にいたような楽しい時間でした。今回は井川自然の家だけでしたが、次回は、もう少しゆっくりして、井川の「夢の吊り橋」を渡ったり、奥大井湖上駅まで足を延ばしたりと、いろいろなところに行きたいと思いました。

今年は、南アルプスがユネスコエコパークに登録されて10年になります。各地で10周年記念イベントが行われ、静大発酵研も関連するセミナーを開催しています。このような機会をきっかけに、多くの人が南アルプス地区を訪れて、南アルプスの素晴らしい自然を享受できればと思いました。また、南アルプスの魅力を伝える博物館が井川にできる予定ですので、これも待ち遠しいです。

2024年7月31日 SBSラジオ「ゴゴボラケ 3時のドリル」

静岡新聞の橋爪教育文化部長が7月20日(土)の南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念連続シンポジウム 第3回「南アルプス高山植物由来酵母とウイスキー&交流会」ご来場頂き、番組内の静岡トピックスで取り上げて下さいました。

南アルプスの高山植物から分離した酵母による静岡のウイスキーの話のなかで二つのキープレーヤー機関があります。

一つは南アルプスの井川蒸留所で、標高1200mの日本一高いところにある醸造所で、木賊湧水の水を使ってウイスキーを作っています。椹島ロッジのさらに奥にあり、車で4時間20分かかったそう。ジャパニーズウイスキーは3年熟成させなければならず、この秋からいよいよクリアしたウイスキーが世に出ます。

もう一つは静岡大学学部横断産官学連携文理融合組織である発酵とサステナブルな地域社会研究所(通称「発酵研」)で、静大各学部のジャンルを横断し串刺しにした研究組織で、中世ヨーロッパのビールを再現したいところから始まり、去年の家康公クラフトの発売に至っています。徳川家康ゆかりの場所から花酵母を採取してオリジナルビールを作るプロジェクトは市の観光振興と大河ドラマ『どうする家康』とタイミングが合い、静岡市内のアオイブリューイング、Horsehead labs、静岡醸造の3つの醸造所から三種類作られました。すぐに売り切れてしまいなかなか飲めないビールとして記憶されています。

この二社がコラボして発酵研で採取した南アルプス高山植物由来酵母でウイスキーをつくるプロジェクトが進んでいます。麦芽を糖化させて発酵させるビールと途中まで作り方が同じモルトウイスキーを南アルプスの酵母も使ってつくるというものです。

SBSラジオの読み上げニュースでも告知して頂いた「南アルプス高山植物由来酵母とウイスキー&交流会」では興味深い話がいくつもあり、なかでも沼津工業技術支援センターバイオ科の鈴木主任研究員がヤマザクラやモクレン、シャクナゲなどから分離した酵母にどれだけ力があるかを分析した話がおもしろかったそうです。サッカロマイセス・セレビシエのなかからアルコールを作り出す力が強い4種類と市販のエール酵母、ウイスキー酵母を分析し、野生酵母4種類中4種類がアルコール発酵能が高く、ウイスキー醸造のポテンシャルがあると結論付けられています。

ハクモクレンの酵母のウイスキーは口に含むと野生の草木のかおりが口に広がり、水を加えると荒々しさが甘くなりけれども芯の部分は崩れない骨格の強さを感じたそうです。このニューボーンは2027年にウイスキーになります。南アルプスの酵母で醸したウイスキーが南アルプスで眠っているのは夢があり、クラフトビール王国、吟醸王国、そこにもってウイスキーの面白い展開が期待できます。

最後に南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念連続シンポジウム 第4回 「南アルプスの水と酒造り」についても告知して頂きました。

10月13日(日)14時00分~16時20分にレイアップ御幸町ビル 5-D会議室にて開催されます。今度は日本酒の話で女泣かせで有名な大村屋酒造場の日比野さんは静岡大学大学院農学研究科出身の異色の経歴を持つ杜氏さんが「南アルプスの水と酒造り」についてお話くださいます。7月講演会で発表された鈴木さんが清酒造り、静岡県オリジナル種麹について、また人文社会科学部の貴田先生が「室町時代における酒造業と社会」と歴史について講じて頂くという理系的話と文系的話が混在するシンポジウムです。

このようなシンポジウムを通して知って飲む、そして蘊蓄があればあるほどそれぞれのお酒に対する愛着、作り手への尊敬、そしてストーリーや歴史、作られている場所のバックボーンを知れば知るほど県外の人に教えたくなる、酒は文化遺産であるとしていました。

ヴィクトリア朝時代のレシピ再現

人文社会科学部の鈴木先生と農学部の樋口さんが前期の大学院の最終授業でイギリスのヴィクトリア朝時代の『ビートン夫人の家政読本』(Mrs Beeton’s Book of Household Management,1861) から931番(鶏肉のサラダ)、506番(それに勧められているドレッシング)、671番(牛すね肉の煮込み)のレシピを使ってランチを準備されました。スコーンにはとても風味のよい酵母が使われました。

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2024年7月25日 静岡新聞報道

2024年7月25日に南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念連続シンポジウム 第3回「南アルプス高山植物由来酵母とウイスキー&交流会」の記事が報道されました。

静岡新聞 【「南アルプス高山植物由来酵母とウイスキー&交流会」】加水で甘みが開くウイスキー原酒

2024年7月21日 静岡新聞報道

2024年7月21日に南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念連続シンポジウム 第3回「南アルプス高山植物由来酵母とウイスキー&交流会」の記事が報道されました。

静岡新聞 南アルプス由来酵母でウイスキーを 静大研究所など進捗報告、3種類に十分な発酵能力

2024年6月28日 第一回ガストロノミーツーリズム研究会報告

6月28日(金)に2024年度第一回ガストロノミーツーリズム研究会が沼津市民文化センターで開催されました。 大雨でしたが多くの参加者があり盛会でした。

今回は発酵研が今年度から力を入れている日本酒がテーマで、しずおか地酒研究会主宰の鈴木真弓さんが、ご自身の足で30年調査した静岡酵母についての密度の濃い発表をしてくださいました。元々歴史がご専門とのことで、酵母と杜氏さんの力など吟醸王国にいたる歴史的背景についてもお話しを伺うことができました。 河村伝兵衛さんの所属であった静岡県沼津工業技術支援センターバイオ科の鈴木主任研究員がパネリストとして、そして横濱副所長がファシリテーターとして登壇され、全体的に専門性の高い内容を洒脱な話術でバランスよく盛り上げて下さいました。

静岡県工業技術研究所沼津工業技術支援センターバイオ科では現在「新しい静岡酵母を開発して吟醸香豊かな静岡県産清酒を国内外に届けたい」クラウドファンディングを募集しています。食事の邪魔にならない飲みやすい食中酒造りを目指しているとのことです。

第2回ガストロノミーツーリズム研究会「商人から見たガストロノミーツーリズムと浜松の水産業」は8月9日です。申込はこちらでご確認ください。うなぎの試食と「富士の酒」のウイスキー樽で熟成された日本酒と摘果みかんの「青みかんスカッシュ」が試飲できます。人気の研究会で最近は入れない方も増えてきました。お早めにお申込ください。

2024年6月16日 登呂遺跡での田植え

2024年6月16日に登呂農耕文化研究所による田植えに鈴木先生と大原所長で参加させて頂きました。

静大人文の篠原先生が10年前から、登呂遺跡で弥生時代の農具を使った米作りに取り組まれています。 樫の木で作った農具で学生さんたちがあざやかに田んぼをならしていっていました。 横20cm縦30cm間隔で種子島豊満の田植えをしたのですが、初めての経験で最初は田んぼで一歩も動くことができず途方にくれました。バランスを崩して泥だらけになりながらも徐々にスピードアップすることができました。

10月に収穫する赤米を発酵研にお譲り頂けるとのことなので、豊作を願いつつ、これから草むしりなどお手伝いに伺うことができればと思います。 大変良い経験をさせて頂きました。

2024年6月15日 南アルプスユネスコエコパーク登録アニバーサリーイベント

2024年6月15日(土)に青葉シンボルロード及び葵スクエアで南アルプスユネスコエコパーク登録アニバーサリーイベントがありました。

井川蒸留所のテントでは先週登壇してくださった十山株式会社鈴木取締役に来月発酵研講演会でお話くださる瀬戸所長が発酵研が提供したハクモクレン酵母によるニューポットの試飲を担当されていました。 前回かなわなかったのですが、今回難波市長にはしっかり試飲して頂きました。ハクモクレンの方が香りがよいと仰って頂きました。 井川の皆さんと今後のガストロノミーツーリズムに向けての打ち合わせをゆっくりできる良い機会にもなりました。

イベントでは井川のお店も並んでいて、とても賑わっていました。

2024年10月13日 南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念連続シンポジウム 第4回 「南アルプスの水と酒造り」

静岡市環境局環境共生課×静岡大学発酵とサステナブルな地域社会研究所共催

南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念連続シンポジウム 第4回 「南アルプスの水と酒造り」

日時: 2024年10月13日(日)14時00分~16時20分
場所: レイアップ御幸町ビル 5-D会議室

参加申込制です。 こちらからお申し込みください。申込みが定員に達しましたら参加の受付を終了させていただきます。

プログラム

司会 藤井真生(人文社会科学部)
14:00-14:30
日比野哲(大村屋酒造場)
「大井川の水と酒造り」
14:40-15:10
鈴木雅博(沼津工業技術支援センターバイオ科 主任研究員)
「清酒造りにおける麴菌の働きと静岡県オリジナル種麴について」
15:20-15:50
貴田潔(人文社会科学部)
「室町時代における酒造業と社会」
16:00-16:20
パネルディスカッション
ファシリテーター:横濱竜也(静岡大学人文社会科学部/発酵とサステナブルな地域社会研究所副所長)  日比野哲 × 鈴木雅博 × 貴田潔

交流会(大村屋酒造場 静岡県オリジナル種麹をつかった試験醸造酒)