サントリー文化財団 2022年度 研究助成「学問の未来を拓(ひら)く」に採択されました

サントリー文化財団 2022年度 研究助成「学問の未来を拓(ひら)く」「コモンズ」としてのクラフトビール ―― 中世グルートビール再現醸造を通じた「発酵社会学」構築の試み(代表者 大原志麻)という研究テーマで採択されました。

本研究は、発酵という微生物の営みを利活用する人間社会のありようを、一方で生物学や農芸化学などの自然科学的見地、他方で歴史学・社会学・法学・経済学等の人文学・社会科学的見地をふまえて明らかにする「発酵社会学」と呼ぶべき学問領域を構築することを目的とし、とくにビールを主題にした共同研究を行うものです。

ビールは紀元前3000年頃から造られているとされていますが、その製造・消費については、発酵工程・品質管理や成分分析など、これまで酵母発酵学などが扱ってきた課題のみならず、どこで誰によりどのように造られ飲まれてきたか、その多様性が注目されるところですが、後者を描き出すためには人文学・社会科学の知見が不可欠です。たとえば、ヨーロッパでもチェコやベルギー、イギリスなど、歴史的にビール先進地域とされるところと、スペインのように第二次大戦後ビールの大量製造・販売がなされるようになったところとでは違いがあります。この違いがいかなる歴史的・社会的条件により生じたのか、人文学・社会科学的研究が待たれますが、いまだ十分とはいえません。さらに、わが国では、1994年の酒税法改正を契機に、各地で「地ビール」の小規模醸造が行われ、とくに2010年代以降高品質のクラフトビールが製造されています。このような動きを説明するためには、「地ビール」・クラフトビール醸造技術のイノベーションをみる一方で、ビール製造・販売・消費を条件づける社会構造を学問的に検討することが求められますが、このような研究も現状、散発的なものにとどまっています。

本研究は、上記の状況と課題に鑑み、「発酵社会学」構築のための社会実験として、中世グルートビール再現醸造と製品化を、「クラフトビール王国」ともいわれる静岡県を舞台に行うことを目指しています。

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