地域の歴史文化を活かした酒造りの風景

2024年3月16日(土)に「地域の歴史文化を活かした酒造りの風景」を開催しました。会場は満席で大盛況でした。

司会は藤井先生でした。第一講演は、佐々木酒造株式会社代表取締役社長の佐々木晃さんより、「洛中での酒造りと大学との麹をつかった食品開発」と題して、佐々木酒造の多岐にわたる取り組みについてお話しいただきました。佐々木さんのお話にすっかり心をつかまれ、あっという間の1時間でした。

佐々木酒造は、いまや洛中で唯一生き残った老舗の酒蔵で、「大政奉還の時に慶喜が飲んでいたのは佐々木酒造の酒や」といわれることも。社長のお兄さんは、今年の大河ドラマにも出演中の佐々木蔵之介さんです。これまでのたくさんの取り組みを紹介され、最後に、「何が失敗し、成功するかはわからない」「とりあえず何でもやってみる、エセ科学は絶対に取り入れない」とおっしゃっていたことが、強く印象に残りました。講演会後の懇親会では、紹介された、聚楽第や銀明水をご提供いただきました。感謝に堪えません。

第二講演は江川文庫の橋本敬之先生より、「戦国期江川酒の復刻」というテーマでお話しいただきました。戦国期江川酒についての貴重な資料を会場の皆様に配付され、江川酒製造の歴史的な経緯のみならず、橋本先生の携われている地域文化継承の取り組みなども紹介いただきました。日本酒再現から地域づくりに至るご講演で、大いに触発されました。ご提供いただいた江川酒、大変おいしかったです。

大トリの第三講演は、北海学園大学の大貝健二先生が、「中小酒造業における個性の発揮とオーセンティシィティ- 東北・北海道を中心に」と題し、第一講演・第二講演をふまえつつ、大貝先生がフィールドとされている東北6県で日本酒が洗練化されていった経緯や、近時製造量が増えている北海道の現状と今後について、印象深いエピソードを交えつつ概観・展望されました。大貝先生の日本酒研究の出発点となった高知の酒についてのお話も、とても興味深いものでした。

参加された方々からは、講演者の顔ぶれと講演内容の充実ぶりに感嘆したとの声を多くいただきました。 懇親会では、三重県立熊野古道センター長の宮本秀男さんが送ってくださった、30年もの、2年もののなれずしも供されました。なれていればなれているほど風味が豊かでおいしかったです。大村屋酒造場の日比野さんは、若竹をご恵贈くださりました。幹事の方が揃えてくださった静岡の日本酒もあわせて、日本酒のさまざまな風合い・豊饒さを心ゆくまで楽しむことができた夕宴でした。あらためて、心から御礼申し上げます。

2024年3月16日 地域の歴史文化を活かした酒造り

発酵研では酵母と由緒をつなげた発酵飲料の開発を手掛けています。とりわけ日本酒は重要な素材です。このシンポジウムでは洛中に唯一存続している蔵元である佐々木酒造の佐々木晃さんに京都での酒造りや産学連携の推進について基調講演をして頂きます。江川文庫学芸員の橋本敬之さんには戦国期の江川酒がなぜ造られるようになり、そして造られなくなったのかについて発見されたばかりの史料を手がかりにおしえて頂きます。北海学園大学の大貝先生には、東北6県の酒造りのトレンドと北海道がなぜ唯一酒造が増えていっているのかについてお話しを伺います。

地域の歴史文化を活かした酒造り

日時: 2024年3月16日(土)13時00分~16時00分(12時30分開場)
場所: レイアップ御幸町ビル7階 7-D会議室(JR「静岡駅」徒歩3分)

参加申込制です。 こちらからお申し込みください。申込みが定員に達しましたら参加の受付を終了させていただきます。

以下のプログラムは現時点でのものです。変更の可能紙があります。

司会 藤井真生(静岡大学人文社会科学部教授)
13:00-13:40
洛中での酒造りと大学との麹をつかった食品開発
佐々木晃(佐々木酒造株式会社代表取締役社長)
13:50-14:30
橋本敬之(公益財団法人江川文庫学芸員)
14:40-15:20
北海道、東北(山形・宮城)の酒造産業
大貝健二(北海学園大学経済学部教授)
15:30-16:00
パネルディスカッション
進行役:佐藤洋一郎(ふじのくに地球環境史ミュージアム館長)
参加者:佐々木晃/橋本敬之/大貝健二

大村屋酒造さんでの酒造り体験

昨年度に引き続き、今年度も年末の12月26日に、島田の大村屋さんで酒造り体験をさせていただきました。今回は、農学部の教職員3名と学生二人が参加しました。

朝3時20分に静大正門に集合し、車で現地に到着。辺りは真っ暗ですが、大村屋さんの建物からは、窯からでる湯気の煙がでているのがみえます。

作業は、蒸しあがった米を熱いうちにほぐす作業、若い学生は蒸しあがった米を肩に担いで運ぶ作業、麹にまぶした蒸米をほぐす作業、酒母を作る作業を手伝わせていただきました。真冬の夜明け前の寒い場所での蒸し米の作業、麹菌をまぶした米をほぐすのは温かい部屋の作業と、結構な温度差の中をいったりきたりしました。

ともかく清潔で丁寧な作業空間でした。一作業終わるごとに丁寧に掃除をします。麹や酵母だけをうまく育てて、他の雑菌ははいらないようにする作業です。また、作業では米一粒たりとも無駄にしません。

一段落すると、温かいお味噌汁がついた朝ごはんをご馳走になり、またその他の場所も案内していただきました。

酵母の培養温度などいろいろな点で、今後の我々の野生酵母の活用に関する活動において、参考になることがありました。酒造りを体験すると、伝統的な工程が、先人たちが発酵が微生物がなせる業とは知らないのにもかかわらず、麹菌や酵母にとって好都合の環境を作っていることがわかります。去年も感動しましたが、今年もまた感動した体験でした。