エフエムしみず「モーニングパル」出演 2024/04/16

エフエムしみず『モーニング・パル』内のコーナー「スクールインフォメーション “GUTS!!”」(7時15分~7月30分頃)、4月第2週から第4週まで、月曜日から水曜日は、静大・発酵とサステナブルな地域社会研究所のメンバーが出演しています。

4月16日は、北海道立総合研究機構(道総研)森林研究本部林業試験場森林環境部長 兼 道東支場長で農学博士の脇田陽一先生に、北海道から電話出演して頂きました。

4月16日はクラーク博士が”Boys,be ambitious”と言って北海道を去った日とのことで、脇田先生ご出演の前に、TOKIOの「AMBITIOUS JAPAN!」が流れていました。

道総研の林業試験場は、冬の積雪の多い美唄にあります。発酵研メンバーが林業試験場を訪れたときも、あたりは雪で覆われ、遠くの山まで真っ白な景色が広がっていました。 そんな林業試験場で、脇田先生は、木材で利用するものとは違う、きれいな花を咲かせたり、おいしい実をつけたり、よい香りがしたりする身近な樹木を研究されています。

脇田先生は、発酵研とのなれそめを話されていました。発酵研が設立される以前の2021年8月、大原所長が担当していたゼミで、中世グルートビール再現の試みが行われました。その際、ホップがビール製造に使われるまえに、主要な副原料であったヤチヤナギを提供してくださったのが、脇田先生でした。 ラジオで脇田先生から、ヤチヤナギが絶滅危惧植物にも指定されたことのある希少な植物であること、ヤチヤナギがヤチ=谷地という湿地を好むこと、ヤナギに似た植物ということでかわいそうな和名がついているけれどもヤマモモ科の植物で、本来Myrica galeというかわいい名前であること、葉も根も茎も全てさわやかなよい香りがすることなどが紹介されました。

ヤチヤナギの自生地は、北ヨーロッパ、スカンジナビア、樺太といった寒冷地が中心ですが、日本では愛知や三重にも、ヤチヤナギがわずかながら自生しているところがあります。そのことから脇田先生は、静岡でもヤチヤナギが栽培可能であると考え、美唄や苫小牧から静岡へのヤチヤナギ移植を行うことを決めたのでした。

脇田先生のお話は、カラハナソウにも及びました。ホップの和名はセイヨウカラハナソウですが、「セイヨウ」のつかないカラハナソウは日本でも生育していて、北海道にも自生しています。日本でビール醸造所がつくられるようになったのは明治初期ですが、北海道に札幌麦酒醸造所がつくられたひとつのきっかけは、カラハナソウをビールに利用するためであったのではないか、と脇田先生は推測しています。しかし、カラハナソウの利用は進まず、早いうちに輸入ホップにより製造されるようになったのでした。その原因は、交配によりカラハナソウの香りがなくなってしまうことにあったのかもしれない。しかし、交配できない環境下で雌株のみ栽培すれば、香りを失わずビールへの活用が可能になるのではないか。脇田先生のそのような見通しから、カラハナソウ栽培の南限である静岡に、昨年雌株のみを移植することになり、この春元気に芽を出しています。 カラハナソウの性質はまだわかっていないことが多いので、静岡への移植を機に、研究が進むことを期待したい、とも話されていました。

日本には未利用の植物がまだまだたくさんあります。脇田先生は、そういった植物のブランディングや利活用が、北海道と静岡、さらにオールジャパンに広がっていくことを願っているとおっしゃっていました。

エフエムしみずはサイマルラジオからも聞くことができます。ぜひお楽しみください。

北海道立総合研究機構森林研究本部林業試験場に行ってきました

2024年3月6日、静大に一番最初に来たヤチヤナギの自生地である美唄湿原近くの北海道立総合研究機構森林研究本部林業試験場に伺いました。

ヤチヤナギの茎頂部からどのようにクローンができるのを実際にみることができて感無量です。 遺伝育種科学を専門とする副学長が挨拶をしてくださり、また今後の研究についてしっかり話を聞いていてくださったので安心です。

いつも静岡でしかお会いすることのなかった森林環境部長の脇田先生の職場は絶景でした。加藤森林本部長にもご挨拶し、また主幹の両瀬先生にも植物の利活用の詳細について細やかに教えて頂きました。

苫小牧のヤチヤナギの自生地を視察

2024年3月4日に遂にヤチヤナギの自生地を訪れました。 雪が比較的少ない苫小牧で、無事に雪に埋もれていない自生しているヤチヤナギの姿を見ることができました。 静岡大学静岡キャンパスとのあまりの環境の違いに驚きました。

湿地を好むので川の近くの低いところで育つ傾向があるようです。いくつもの点在する自生地を見せて頂いてなんとなくどこでヤチヤナギが育つのかがわかった気がします。ヤチヤナギの傍ではハスカップも自生していました。ただウトナイ湖の傍では全くはえないのが不思議です。

冬のヤチヤナギですがしっかり香りがしてシャンプーにするのもよいのではという話になりました。

夜はHOKKAIDO BREWERYさんの試作品であるホップを使わない100%ヤチヤナギのビールを試飲させて頂きました。とても爽やかでおいしいビールに仕上がっていました。静岡でもヤチヤナギが沢山育って、幅広い利活用ができれば嬉しいです。

ヤチヤナギとカラハナソウの栽培方法、ヤチヤナギ散水・調査システムの操作方法

農学部の実験補助員の樋口さんに北海道から静岡大学に移植された絶滅危惧種ヤチヤナギとカラハナソウの栽培方法、そして人文避難広場に設置されたヤチヤナギ散水・調査システムの操作方法についてのインストラクション動画を作成して頂きました。発酵研メンバーはこれらの動画で方法を学び、栽培・繁茂に協力してもらっています。


ヤチヤナギ栽培・研究システム設置

11月23日、人文社会科学部避難広場にヤチヤナギ散水・計測システムが設置されました。システムは、水道水を利用しにくい場所で雨水を溜め、時間を決めて散水するものと、ヤチヤナギが植えられている気温や土の水分量などのデータをWi-Fi経由で常時計測するものとからなっています。工学部の下村先生が開発してくださいました。 設置作業には、工学部の下村先生、北海道総合研究機構林業試験場の脇田先生、農学部の研究補助員の樋口さん、人文社会科学部の鈴木先生、大村先生、大原所長、横濱副所長が参加し、丸一日がんばりました。 翌11月24日には、散水システムを清水区と富士宮市にも設置しています。 計測システムにより栽培環境を継続的に捕捉することを通じて、ヤチヤナギの安定栽培においてどういう条件が望ましいか、明らかになってくることが期待されます。

ヤチヤナギ散水・計測システムの設置とあわせて、脇田先生が、絶滅危惧植物のカラハナソウの根を自生地である北海道から移植されました。 カラハナソウは、明治初期、北海道・札幌にて日本ではじめてビールが造られた際使用されたもので、「和ホップ」などともいわれます。カラハナソウは早いうちに輸入ホップに切り替えられましたが、その原因は、カラハナソウが交配により香りをなくすため、ビール造りにおいて非効率であったことにあるのではないか、とも考えられています。 今回の移植は、香りのよい雌のカラハナソウのみを、交配の起こりにくい環境で栽培することを試みるためのものです。静岡県は、日本のなかで、カラハナソウが生育した記録のある南限の地であるといわれています。栽培に成功した際には、カラハナソウを使ったクラフトビールの製造・販売を行っていきたいと考えています。

北海道のカラハナソウは、人文社会科学部避難広場、農学部、清水区、富士宮市、御前崎市に植えられました。大事に成長を見守っていきたいと思います。